かみとゆめの作品紹介ブログ

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島本理生さん小説『シルエット』

嵐の松本潤さん、有村架純さんらが出演した映画『ナラタージュ』の同名小説(2005)をはじめ、「アンダスタンド・メイビー」(2010)や「Red」(2014)、「わたしたちは銀のフォークと薬を手にして」(2017)などの作者である島本理生さん。

 そのデビュー作となった作品「シルエット」が角川文庫にて装丁もあらたに復刊しました。本作には「シルエット」(2001)、「植物たちの呼吸」(1999)、「ヨル」(1998)の3作品が収録されています。

今回は表題作の「シルエット」をレビュー。

 

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「シルエット」あらすじ

女性の体に嫌悪感を覚える元恋人の冠(かん)くん。冠くんと別れ、半ばやけでつき合った遊び人の藤野。今の恋人、大学生のせっちゃん…人を強く求めることのよろこびと苦しさを、女子高生の内面から鮮やかに描く群像新人賞優秀作の表題作。

シルエット 島本 理生:文庫 | KADOKAWA より引用)

 

作家の原点で、すでに島本作品の特徴あり

15〜17歳の間に執筆した3作品が収録されている「シルエット」。表題作「シルエット」は17歳のころの作品だそうです。

行間が広く、文庫本にしては文字も大きいのですが、空白の多いやわらかな印象の文字列からは想像ができないほど、女子校生の切実な想いを描いた内容でした。

まず、17歳で人間関係や恋愛に対してこれほどに俯瞰していることが恐ろしく感じられます。高校1年、2年生のころに、ここまで引いた目線を持ち、そのうえ作品として昇華させられるとは、わたしが10代を終えた今だからこそ余計に異才な小説家だと思いました。

 

島本理生さんの小説をすべて読んだわけではないですが、主人公の多くは女性で、その主人公をとりまく男性が複数人登場するのが特徴。

設定や背景は違うものの、主人公の女性はどの作品も比較的似ている部分があり、似たような雰囲気を持っています。だからこそ、毎度のことながら、こんなにも人柄や雰囲気の違う男性が描けるのか・・・と脱帽し、女性視点で心をえぐられるような感覚があるのではないでしょうか。

また、多くの作品が恋愛をベースに描いていながら、家族、とりわけ母娘の関係性への描写が徹底されている点も際立っています。「シルエット」に登場する主人公と母親も、深い関わりを避けていながら、それでも家族としての関係性が崩れない、根底にある信頼が描かれていました。

これらの特徴は、執筆をはじめた初期の段階ですでに完成されていたのかと思うと、島本さんの、作品に注ぐすさまじい力を感じずにはいられません。

 

そして、「シルエット」は最後のひと展開も最高。「そうか、こうするための、あれだったのか」と短い作品ながら構成力の素晴らしさも際立っていました。

 

 

「シルエット」も島本理生さん作品のお気に入りに

個人的には「アンダスタンド・メイビー」は島本理生さん作品のなかでもっとも好きで、次いで「Red」がお気に入りだったのですが、「シルエット」は今後も読み返したい、貴重な1作品に仲間入りしました。何より、10代のころの幼さ、拙さを思い出し、作品に心を揺さぶられているのか、自分の過去の経験に心が揺れているのか、絶妙な感情をもたらしてくれる作品でした。